早く…この場から去りたい。
わたしは
床に転がるバッグを掴んで
狭い廊下でキスする二人の横を
ぎゅっと目を閉じて通りすぎた。
好きだったのに。
運命の人だって思って……
玄関のドアノブに手をかけた時。
やっぱり名残惜しくて…
拓也の方を
振り返ってしまった。
そんなわたしに気づいたのか
拓也がキスの合間に
ちょっと唇を離して
わたしに目を向けた。
「えーっと…
俺ら別に付き合ってた
わけじゃねぇもんな!あはは」
最後にごめん
くらい言うかと思ったら、
拓也はそんなことを言って笑った。
「うふふっ…
なーんだぁ
その程度のコなんだぁ
もう他の女の子
家にあげちゃ、だ、め、だ、ぞっ」
かなさんも
勝ち誇ったように笑って
拓也に甘えて。
わたしは振り返ったことに
後悔しながら
拓也の家を飛び出した。
キィ…ガッチャン
ドアの閉まる音が
一人たたずむわたしに
はい、おしまい
さよなら。と言ってる気がした。

