教室もどるか、と
俺がトイレに行くのをやめて教室への廊下を歩き出すと、


教室からななが
飛び出してくるのが見えた。


キョロキョロしてて
俺の姿を見つけると
ぱっと笑顔になった。


たたっと駆け出して
俺の方に向かってくる。


ああ、俺しか目に入ってねぇ…

危ねぇよ、人にぶつかるぞ…


と、思ったと同時に。


バンッ


「きゃあっ…」

ななが人とぶつかって
尻餅をついた。


ああ、まったく…


俺はななに駆け寄ろうとしたが、


「ごめんね、怪我はない?」

なながぶつかった相手が
さっと手を貸して
ななを立ち上がらせた。


その瞬間のななの顔。

目を見開いて
頬を染めて。


あ……

あいつは、
また恋に落ちた。


ななの手から
白くて小さいものが落ちて
俺の足元に転がってきた。


コロコロ…

授業中なながポケットにしまった
俺の消しゴム。


ななはこれを
今返そうとして。


でも、俺の消しゴムのことなんて
もうななの頭にはないだろう。