・・・

いつの間にか、

涙が流れていた。

・・・

悪い方向ばっかり考えてたから。

・・・

起き上がった孝明は、

私をそっと抱きしめた。

「ゴメン、ホントに、

何でもないの。向こう行ってるね?」

腕から逃れようとしたけど、

孝明は離さなかった。


・・・


「…傷」

「・・・うん」

抜糸されたから、

包帯も巻いてない。

・・・

傷跡だけが見える・・・

「よかったな、治って」

「・・・うん」

「これ、遅れたけど、一か月記念・・

と、完治記念?」

そう言って微笑んだ孝明は、

べッド横に置かれた小さな箱を

私に手渡した。