五分で恋におちました。

「優花、今どこにいる！？」


電話に出た瞬間私が声を出す間もなく浩介の少し焦った声が聞こえてきた。


「ごめん浩介………終電乗れなくって今タクシーで帰ってるの。」


「乗れなかったって何で？何かあったのか？」


「駅前で会社の人に会ってついファミレスでお茶を………。」


私は浩介に嘘をついた。


今日あった出来事を浩介に話すことはできなかった。


「そっか～なら良かった。家に帰ったらおばさんが優花まだ帰って来ないって俺のとこまで来たぞ。珍しいな優花が会社の人とお茶なんて。」


私は人付き合いが苦手で会社の人とお茶をするなんて一度もしたことがない。


「私ももう23歳なんだからたまにはこういう事もあるわよ。」


「そうだよな、でも一言連絡ぐらいしろよ。みんな心配してるんだから。」


「そうだね……心配かけてごめんね。」


「優花に何もなかったんだから俺はそれでいいから。」


相変わらず優しい浩介。


浩介の声を聞くとやっぱり安心する……。


今日襲われて恐かった事を話して慰めてもらいたくなる……。


でも…………。


頭に思い浮かぶのは恐かった事より助けてくれたあの人の顔………。


「ありがとう浩介。明日も忙しいんでしょ？私ももうすぐ家着くから気にしないで寝て？」


「そうだな。優花愛してるよ、おやすみ。」


「おやすみ浩介………。」


私は罪悪感でいっぱいになりながらも浩介に今日の事を話す事が出来ずに電話を切った。