五分で恋におちました。

彼は本当に優しい人だ。


私が泣き止むまで嫌な顔一つせずに一緒にいてくれてタクシー乗り場の列も一緒に並んでくれた。


「今日は本当にありがとうございました……。どうお礼をしていいか………。」


「当たり前の事をしたまでですから気にしないで下さい。それでは僕は失礼します。」


「あっ…………。」


まだ名前も何も聞いていない………。


そう思ったがバタンとタクシーのドアが閉められてしまった。


せめて名前ぐらい知りたかったな………。


そう思っていると携帯が鳴り出した。


この曲が流れるって事は浩介だ。


私は電話に出るのをためらった。


今日の事を浩介に話すべきだろうか……。


男に襲われた事……助けてくれた彼の事………。


色々考えていると音が鳴り止んだ。


鳴りやんでほっとしたがまたすぐに同じ曲が流れ出した。


私はこの曲を聞いて出たくないって思ったのは初めてだ。


でも浩介を無視するわけにはいかない。


私は緊張しながら電話に出た。