俺は何言ってんだか……

「いいよ、
その呼ばれ方は
久しぶりで照れるけど」

マジでいいのか?

「康哉だけズルい」

俺たちのやり取りを
見てた奏が頬を
膨らませて怒った。

「奏も僕のこと
兄だって思ってくれるなら
好きに呼んでいいよ
ただし、その呼び方は
この家で三人で
居る時だけだからね?」

そりゃそーだ。

歳の差はあまりなくても
明らかに他人だろうと
わかる俺たちが
外で凜先輩を
“凛兄ちゃん”なんて
呼んでたら変だからな……

「わかった」

奏と二人で頷いた。

「ねぇ、凛兄ちゃん
辛いかも知れないけど
莱ちゃんのこと
話してくれるか?」

凛兄ちゃんこと
凜先輩は一瞬辛そうな
顔をして話し出した。

「莱は当時、
中学に上がったばかりで
最初の頃は楽しそうに
その日あったことを
僕に話してくれてたんだ。
だけど、夏休みが明けて、
二学期に入り、
二ヶ月程経った
十一月初めあたりから
ぱったり学校の話しを
しなくなって、
その時は友達と
喧嘩でもしたんだろと
思って気にしいなかったんだ」

「だけど、一週間、一ヶ月と
学校の話しをしない莱を
段々不信に思い、訊いたら
学校でイジメられてると
小さな小さな声で言った。

原因はその当時の
リーダー格の子と
遊びに行くのを
断ったから。

何ともくだらない
理由だろうね……

それからは根も葉も無い
噂をたてられ、イジメられ
辛さに耐えられずに
僕が無実の証拠を
集めてる途中で死んでしまった」

当時を思い出しているのか
目には涙が溢れている。

本当にくだらない。

そんなことで……

自分の思い通りに
ならないからって
人をイジメて
いいことにはならない。

それはただの
自己満に過ぎない。

今回の場合は
俺本来の性格も
あったんだと思う。

くだらないことには
極力関わらないし
関わりたくない。

それに加えて、
奏や先輩が居てくれたから
大事には至らなかったんだ。

俺を信じてくれた奏。

最初は協力すると言われ
驚いたけど、こうして
助けてくれた凜先輩。

俺は恵まれている。

だから、
困っている人が
居たら、今度は
俺が助けてやりたいと思った。

一年後、本当に
起きることを俺は
まだ知らないのだった。