「もぉ一つ
生家がお金持ちなんだ」

先輩の父親の名前を
聞いて俺も奏も
ひっくり返り
そうになった……

あの有名な会社の
会長だったなんて……

そりゃコネも出来るよなぁ。

「すごい」

無意識に出た言葉だった。

そして、先輩は
妹さんの話をしてくれた。

二年前、イジメを苦に
亡くなったらしい。

凜先輩が証拠を
集めてる最中に
起きたことだと
悔しそうに言った。

「僕がもぉ少し早く
証拠を見つけてたら、
莱(らい)は死なずに
済んだかも知れない」

そう言った先輩は
泣きそうだった……

そんな過去があったから
俺の時に一生懸命
やってくれたのだ。

怖かったのかも知れない。
友人の俺が
妹さんの様にイジメを
苦にして死んでしまうん
じゃないかと……

基本、俺は
ムカツいても気にはしない。

それに、奏も
居てくれたしな。

そう思ったら
この先もずっと
凜先輩に
後ろから抱き着いた。

それに、いくら
気にしないとはいえ
先輩が居てくれなかったら
俺の無実は
証明されずに
あいつを襲った
犯人にされたあげく
学校を退学に
されてたかもしれない。

「先輩、
本当にありがとう」

抱き着いた俺の頭を
優しく撫でてくれた。

亡くなった妹さんを
思い出してるんだろうか?

何だか、兄弟が
できたみたいで
くすぐったい気持ちになった。

奏も兄弟みたいなものだけど、
同い年の双子の兄弟のようで
凜先輩は兄のようだった。

「あ、康哉、ごめん」

無意識で撫でていたらしい。

「大丈夫、嬉しかったから」

「ぇっ? 嬉しい?」

俺の言葉に凜先輩は
キョトンとして奏は笑っている。

「こいつは一人っ子だから
先輩が兄みたいなんだと思う」

笑いながら俺が
思ってることを言った。

「そんな風に
思ってくれるなんて
僕も嬉しいなぁ」

先輩は一度俺を離して
正面から抱きしめてくれた。

心が温かい……

両親には話してないし、
多分、話しても
無関心だろうな。

だから凜先輩は
本当の家族よりも
家族みたいだと思った。

「あの先輩、
お兄ちゃんって
呼んだら駄目かな……
ごめん!! やっぱり何でもない」