黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□

◆翔太たちのことだった。


…いや、『咎める』…というニュアンスとは少し……というかだいぶ違うような気はする。

どちらかといえば、『絡まれる』と言ったほうが正しい気もする。

だけど、上戸先生のことを思いつくのと同時に、連鎖的にその名前が浮かんできてしまったんだから仕方ない。


…まあでも、『咎める』にしろ『絡む』にしろ、翔太たちがもし本当にそうしようとするなら、もっと早くにそうしているはずだ。

例えば、ここに来るまでの中央通路上を歩いてる時とか。

ましてや、ここには翔太や良雄が苦手とする、委員長までいるんだし。


俺は、何気なく委員長のほうを見た。

彼女は、今までに見せたことのないような幸せそうな表情で、裕也の顔を見つめている。

…それはまるで、弟を溺愛する姉が、弟が幸せそうにしている姿を見て、心から喜んでいるように。


俺はそれを見て、委員長と裕也との関係性について考えかけたが、先刻のことのほうが重要だと判断し、思考を中断した。

そして、先刻の不安要因に対する思索を再開する。


……そう。

だから本来、今更ヤツらのことなんて気にする必要がないことは、頭の中では充分にわかっている。


……9割方くらいは。


俺はそんなことを考えながらも、思考とは正反対に、自分の背後……翔太たちのことが気になって仕方なかった。

『注意しなければならない確率なんて、たった1割…いや、それ未満だ』…って、理解しているはずなのに。