「すー……。 すー……」


…窓側のシートには、気持ち良さそうに寝息をたてている小学生が約一名。

正確には、“ 小学生みたいなヤツが ” 、だけど。


「私の隣りにいたから、退屈しちゃったのね、きっと」


委員長が、またあの涼やかな優しい笑顔で、そのやんちゃっ子のようなそいつの寝顔を眺める。


…お察しの通り、座席から足を投げ出し、窓のほうに顔を向け、体をシートにうずめているこのちびっ子が、[ 涼瀬 夏樹(すずせ なつき)] 。

俺や司の友達であり、おそらくは裕也の一番の親友。


身体的特徴をあげれば、まずは裕也にも勝るとも劣らない低身長(勝るのと劣るのとどっちがいいことなのかは敢えて不明)と、 いつもどこでそんなにこんがり焼いているのか知らないが、全身小麦色の艶やかな肌。

あと、肩くらいまである後ろ髪を、首の後ろ一カ所で結った、ポニーテールの位置を下げたバージョンのような髪型。

そして最後に……


「夏樹くん♪」


「…う、うーん…」


嬉しさを隠せない裕也の声に、ようやく目を覚ました様子の夏樹。


「……ん……?
…なんや、裕也か」


……そう。

この関西弁。


…バレた原因の話しに戻るが、今までこんなに気持ちよさそうに寝ていたヤツが、間違っても具合が悪そうになんて見える筈がなかった……。