そして再び口を開き、


「…わかったわ、そういうことにしといてあげる」


そう続け、今度は裕也だけに柔らかい笑顔を向けた。

その笑顔を見て、俺は心の中でつぶやく。


……こんな笑顔もできるんだな、委員長……。


いつも規則や道徳に厳しく、全く隙のないように思えた彼女のそのリアクションに、正直驚いた。

…というか、そのギャップになのか優しさになのかはわからいけど、なぜか少しだけ胸が震えた。


笑顔を向けられた裕也は、


「あ、ありがとうっ、水無月さんっ♪」


泣きそうだった顔を、そのままひどく嬉しそうなものへと変え、ぺこりと頭を下げる。

それを見た小町屋が、どや顔をつくって俺のほうをちらっと見た。


…が、いや、危なかったぞ今の…。


司も俺と同じことを考えていたらしく、苦笑いを俺のほうに向ける。


だって委員長はさっき、『そういうことにしといてあげる』…って言ってたもんな…。

要するにやっぱり、彼女には小町屋の嘘なんてバレバレだったらしい…。

だからこれは、裕也の泣きそうな顔と、親しい小町屋に免じての情状酌量…ってとこだったんだろう、きっと。


そして、こうもあっさりと嘘を見破られた原因は、委員長の隣りのシートを覗き込めば一目瞭然だった。