黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□

◆良雄の一撃を待って、カウンターを狙うことにした。


やはり、ケンカ慣れした相手と戦う場合は、迂闊にこちらから攻めるべきではない…。


そう判断したからだ。

良雄は、俺が自分から攻める意思がないとわかると、苛立ったように言った。


「…そんなガチガチに固まった身体でぇ…とっさに俺の拳を避けられるとでも思ってるのかぁ…?」


…挑発ともとれる、そんな発言。


直後。


突如というか当然というか、良雄が、一気に距離を詰めはじめた。


プロのキックボクサーがするみたいに、ステップを刻みながら慎重に、徐々に距離を詰めてくる…

…のかと思いきや、良雄のそれは、まるで違った。

言うなれば、それは “ ラン(Run)” に近かった。

もともとそういうスタイルなのか、それとも完全に俺を舐めきっているのか、慎重とか警戒とか、そういった気配は微塵も感じられない。

ただ一直線に、俺との間合いを一気に詰める。


──奴との距離、およそ1m強。


良雄の長いリーチなら、キックならあと半歩、パンチなら大きく一歩踏み込めば、俺の体に、一番効率的に打撃が届く。

つまり、見誤れば死活を分ける、お互いにとってギリギリの間合いだ。


…額から、嫌な汗が流れる。