矢野とは、以前間抜けなことに階段から落ちかけて以来、少しだが話すようになった。 元々人懐っこい矢野。 恵一人くらい受け入れるスペースはいくらでもあるんだろう。 「おはよう」 挨拶を返すと、当然のように隣に並ぶ。 「今日寒いねー」 寒そうにマフラーに首を埋めている。 「寒い。と言うか風痛い」 自転車通学の向かい風は痛い。 ただでさえ風の抵抗で顔に冷たい空気がダイレクトにぶつかってくるのに、向かい風なんて吹いたら何かの嫌がらせかと思う。