目をつぶったのとほぼ同時に引っ張られた恵の腕。
その手のをおかげで恵は何とか落ちることなく階段の上に留まった。
「間に合ったー」
安堵の声を漏らしたのは、ほとんど話したことのないクラスメートだった。
「大丈夫、笹原さん?」
「矢野くんありがとう。
……絶対落ちると思った」
「間に合って良かったー本当に」
安心し切ったようににっこりと笑う矢野。
矢野はいつも人の集まるところにいて、可愛らしい笑顔を向けている。
静穂と一緒にいるせいか、元々の性格のせいか、あまり人の集まるところにいない恵とは接点は少ない。