その日、朝教室に入ると裕は既に登校していた。
特に何も考えず、自分の席に行こうと裕の前を通ったとき、
「おはよ」
裕の方から声をかけられて、失礼なくらい驚いて肩を震わせてしまった。
「何でそんなびっくりしてんだよ」
「あ、いや、おはようございます……。
びっくりした」
何でこんなに戸惑っているのか、自分でもよく分からない。
「昨日……でもないか。今日はありがと」
電話でもお礼は言われたけれど、直接言われるのはまた違う。
「いいえ、こちらこそ」
恵が返したところで、裕の方が友達に呼ばれたので裕は片手をあげて、
「ごめん。じゃ、またね」
と笑顔で向こうへ行った。

