駐輪場に自転車をとめながら、かじかんだ手を擦りあわせた。 「さむ……」 カラカラ、と自転車が近づいてくる音が聞こえる。 何気なく振り返った。 「あっ……」 裕、だった。 裕の方も恵の声で顔を上げて、目が合った。 「おはよ、笹原さん」 たぶん、裕の顔を正面から見たのは初めてだ。