ただいまの挨拶もそこそこに自分の部屋に駆け込んだ。 窓から綺麗な月が覗いている。 深呼吸をして携帯に表示させたただ一人の名前を見つめた。 見つめすぎて画面が消灯しかかって慌ててボタンを押す。 何度繰り返しただろうか。 よく考えてみれば、恵から電話をかけるのは今日が初めてだ。 もう気が変わっていたらどうしよう。 そんなことが怖くて発信ボタンが押せない。 でも、かけるなら今日しかないのだ。 どうしても、今日伝えたい理由がある。 大きく息を吐いて、発信ボタンを──押した。