「恵ちゃん、夏目漱石が『I love you』をなんて訳したか知ってる??」 唐突にそんなことを訊かれた。 「『I love you』……。『愛してる』じゃないんですか??」 一応言っておくと、ここで答えが『愛してる』だったら訊いていないということは恵にも分かっている。 「違うんだな、それが。まぁ本当に言ったのかどうかは確かじゃないけど、一般に有名なのは」 そこで一旦区切って、秋は月を見上げた。 「『月が綺麗ですね』」