「あ、お金」 チケット代を払えるだけの金額なんてどう考えても持ち合わせていない。 「あ、いーよ? 払わなくて」 野々宮はあっさり言うが、一般的な高校生がさらりと他人の分を負担できるような金額ではない。 「それ元々従姉妹がくれたやつだし」 「でもそれは野々宮くんにあげたものだからあたしがタダで貰うわけには……」 「いーんだって。 従姉妹だって4枚全部俺が使うとは思ってないしね」 恵も食い下がったが、野々宮が引き下がりそうにはないので、大人しく二枚のチケットをいただいた。