言わなきゃ、伝えなきゃ、そう思えば思うほどタイミングを逃す。


矢野の笑顔を見るたびに心が痛む。

あたしなんかのことを好きって言ってくれる人なのに。
こんなに優しくしてくれるのに。
毎日毎日話しかけに来てくれるのに。

だからと言って気持ちが変わることなんてないのに、そんな言い訳がぐるぐると回って嫌になる。


「笹原さん、聞いてるー?」

「え、あ。
ごめん、英語の先生が彼氏いないって話だっけ??」

「……それだいぶ前に終わったんですけど」