ファーストムーンを見た次の日、教室に続く階段を上がっていると、後ろから軽やかな足音が聞こえてきて、徐々に速度が遅くなる。


「おはよ、笹原さん」


「おはよう……矢野くん」


いつもと同じように矢野はかわいらしい笑顔を恵に向ける。

そうだ、矢野くんに告白されてたんだった……。

いい加減、返事を返さないと。

返事と言っても答えは決まっている。
あたしが好きなのは、竹沢くんだけだから。