ネット勇者

-???-
「最近は最強とうたわれる勇者様が出てきたみたいじゃん?」
「ちょっと、我らがおとなしくなるとすぐこれだ。」
黒づくめの集団が口々に@モグを罵り合う。ゲラゲラと笑いながら話をしていたのだが、コツっと足音がしたと思えば笑い声、話し声が全て止みあたりはしんと沈まりかえる。
「久しぶりに戻ってきたわ。」
独特の関西弁、その声を聞くと皆が膝まづいて「お帰りなさいませ」と声を揃えて言う。
「おう、帰ったわ。んで?ここんとこの情報は?」
この一言を聞くと1人が立ち上がり関西弁の男の目の前まで歩いて行くと再び膝まづく。関西弁の男は先ほど立ち上がった1人の男からデータを受け取り全て読み込む。
「なるほどな。゛親切ネット勇者”か、おもろいな?奇襲でもかけてPKしても楽しそうやけど…」
その男はにやりと笑うとまるで王座のような金で装飾された赤いクッションの敷いた椅子にのけぞりながら言う。すると膝まづいていている数人がさっと立ち上がちどこかへと行ってしまう。
その後、男は王座にアリを組んで座り、赤ワインを注いだグラスを弄ぶ。
「綺麗な赤やな。まるで血みたいや、これから楽しいパーティーの始まりやな。なーメロ?」
クククと笑うと地のように濃い赤色のワインを飲み干す。
-ギルド内-(リルリル)
「これ…誰からだろう?」
リルリルは自分宛に届いた一通の手紙を手に首をかしげながら封を開ける。゛森でいい木の実を見つけたのでリルリルさんに場所を教えます。-あなたのファンより-”と書いてある。リルリルはそれを読んでいい木の実が気になった。どうしてもイケと@モグに先ほどのお詫びがしたく不安に思いながらも、「森に木の実をしゃがしにいきましゅ」と場所を記したチャットを送り森へ向かう。
-森にて-(リルリル)
「いい木の実なんてなかった!!><」
リルリルは森をくまなく探索するも、いい木の実など無く寧ろ、不気味なぐらいなくらい何もなくあたりはシンっと静まり返っているのだ。
「おかしいな?この時間はシュライムが━━━━っ!!」
リルリルが首をかしげながら歩き続け、気配を感じ後ろを振り向こうとするが、それよりも早く足を刺されバランスを崩して倒れてしまう。
「うぐ…だれでしゅか…?」
起き上がろうとするも、上に誰かがドカっとのっかり首筋に剣を突きつけられれば抵抗もできずに逆光で見えない相手の顔を睨もうとする。
「ゴメンな、リルリルっち。ちょっと、人質になってもらうね?」
少し逆光になれた目で見ると自分の上に乗る人物はメロだったのだ。それも、いつもの人の無邪気におちょくる顔ではなく、とても悲しそうな今にも泣きそうに笑うメロなのだ。
(どうして?どうしてそんな顔で笑うの?)
リルリルはその顔を見るとますます抵抗する気力をなくした。
リルリルはメロの言うとおり「助けて」とだけチャットを送る。

暫くすると@モグが駆けつけてくる。
「リルリル!!」
メロがリルリルに剣を首に突きつける様子を見れば@モグが叫ぶ。
「モグっち動いたら、リルリルっちの命はないっすよ。」
@モグが駆け寄ろうとすればメロはすぐに上記を言う。@モグハ打つ手もなく無言でメロを睨む。メロは無表情でリルリルの足を刺す。
「っ!!うぐぁ…」
リルリルは痛そうに声を上げる。痛覚は勿論感じないが自分の体が刺されたのを同じ視点で見れば痛いと感じるのは当たり前だ。リルリルのHPケージが半分以下になった。
「ヤメロ!!俺が狙いだろ!!リルリルは関係ない!!」
ソレを見た@モグはすかさずそう叫ぶ。
「じゃあ、俺達に殺されてくれる?」
メロは見は辛かったように問う。@モグハ黙ってコクコクと頷く。メロが黒ずくめたちに命令をかければ黒ずくめ達が@モグに一斉に襲い掛かる
。全員がいろいろな武器で攻撃するも、減っていいくHPケージは3分の1以下、しばらくしてイラつきを覚え始めたメロ自身も参戦する。さすがにその辺の雑魚とは違いみるみる@モグのケージが減っていく。あと1撃くらえば死ぬだろう。
@モグは「もうダメだ」と思い死ぬ覚悟を決めたその時、その一撃は@モグではなくそれを庇うように飛び込んできたリルリルが盾になり攻撃を逃れたのだ。
「モグしゃん…―――――。」
最後に何かを言おうとしたリルリルだがそれも一歩遅く聞けないものとなってしまった。
その様子を見たメロは悔しそうに言う。
「…。負けちゃった、早く始末してくれていいよ。」
メロは人質がいなくなった今、@モグに勝つすべはないと武器を捨てて手を挙げる。@モグハ先に黒ずくめをすべて倒し終えるとメロに1歩ずつ歩み寄る。メロは逃げようとせずに@モグを見つめる。悔しさからかこれから殺されるという恐怖からかメロの目から涙が零れる。
「泣くほど怖いなら何故こんなことをしてた?」
@モグは一歩一歩と歩み寄りながら冷たい声でメロに尋ねる。
「殺されるのが怖いわけじゃない。」
「なら、何故泣いている?」
@モグは冷静に剣をメロの喉元に突き付ける。