明るい。

瞼を閉じていても光が見える。

いつもの光とちがう。

白い光ではなく、少し丸みをおびたオレンジ色の光だ。

だが、闇に慣れすぎたスイレンにとって、その光は激痛となるほど痛かった。

思わず手で自分の目を覆うと、側に人がいたのか、その人が動いた気配がした。

「どうしたのぉ?」

幼い、のんびりとした子供の声だ。

「……包帯……は……?」

思っていた以上に掠れた声だ。

自分の声ではないように聞こえる。

久しぶりに声を出したからだろうか。

「包帯?あるよぉ。でもねぇ、お姉ちゃんがつけてた包帯はぼろぼろだったんだよねぇ。だからぁ、新しいのしかないんだよねぇ。それでもいいのぉ?」

「…………だい、じょ……うぶ……です」

なかなか思うように声が出ない。

元から声は出せないのだ。

ダークがスイレンの声を好み、他人には聞かせぬようにほとんど奪ったからだ。

ふわっと、手に包帯が置かれると、慣れた手つきで素早く自分の目に包帯を巻いた。

闇が広がる。

それでも、まだ明るく、少しズキズキと目が痛む。

慣れるのに少し時間がかかりそうだ。

「お姉ちゃんは目が見えないのぉ?」

のんびりとした口調にスイレンは小さく笑った。

不思議な子もいるものだ……。

「……はい。……見え、な……い、です」

「声も出せないのぉ?」

「声……も、なか……なか…出せ……ません、ね」

「じゃあ、どうやったら出せるのぉ?」

「……取ら、れ……たので……、出せ……ませ、ん」

「じゃあ、頭の中で会話しよぉよぉ」

スイレンがまた小さく笑った。

想像していた通り、ここは普通の人がいる場所ではないらしい。

”あなたは誰ですか?"

「アネモネだよぉ」

”ここはどこですか?”

「それはねぇ、言えないんだぁ。でもねぇ、ここはねぇ、みんな何かを持っているんだ。ところで、お姉ちゃんは目を開けてみないのぉ?」

スイレンがまるで女神のような微笑みを浮かべた。

”目を開けてしまうと、みなさんが怖がります”

「怖がるって誰をぉ?」

”私です”