でもある日、気付いてしまった。


不味いと言いながらも、淹れたお茶を絶対に残さないでいてくれることに。


きっかけは、たったそれだけのことだった。

本当に小さな出来事。


だけど、慣れない職場で頼る人もいなかった私はそんな些細なことが嬉しくて。


それから少しずつ部長のことを意識するようになった。


姿が見えればドキドキして、後ろ姿に、横顔に胸の奥がきゅんと痛くなって。

怖いと思っていたあの声だって、恋を自覚してしまえば何のその。

色気しか感じないその声に、怒られている同僚たちを羨ましく思うこともあった。