翌日の朝。
こっそり図書室を覗くと、
あっ、やっぱり居る。
手に分厚い本を持った榊が、脚立に腰掛け難しい顔をしていた。
――コンコンと窓をたたく。
榊が不思議そうな顔をして、窓を開けてくれた。
「おはよ、榊」
「…おはよう。えっと、君は…」
ん?そう言えば名前言ってなかったかも…。
「俺、神崎 葵(カンザキ アオイ)って言うんだ。よろしく」
「…………」
榊は少し困った顔をした。
「どうしたんだ?もしかして人と関わるの嫌とか…?」
ここで噂の人嫌い発揮か…?
「いや、そうじゃないんだ。……ちょっと待ってて」
「?」
榊は図書室の奥へと消え、姿を見せたときには手にメモ帳とペンを持っていた。
「これに名前書いてもらえる?」
「へ?あ、うん。」
言われるがままに俺はメモ帳に名前を書いた。
…そんなに難しい名前かな?
「はい」
「ありがとう。神崎は、俺と会ったことあるのかな?」
「…え?」
昨日のこと覚えてない…?
「昨日廊下で…俺がぶつかっちゃったんだけど」
「…ああ、あれが神崎か」
ぶつかったことは覚えてるんだ…。
「俺、そんなに印象薄いかな?」
二回も顔を合わせて覚えられてないなんて…。
もう相当影が薄いとしか…。


