「どうだった?」
弾き終わって将吾は不安そうに尋ねてくる。
「すっげー巧かった!!この曲好きだ。聴きやすいし。」
「練習した甲斐があったな。」
安心したように将吾は微笑む。
そして立ち上がろうとした瞬間、将吾がバランスを崩した。
間一髪の所で俺が身体を支える。
「大丈夫か!?」
「ああ、ごめん。」
謝る将吾の顔色は朝より悪くなっていた。
「なぁ、やっぱどこか悪いんじゃないか?」
「平気だよ。至って健康だ。」
「そんな訳ないだろ!?顔色も悪いし、身体だってフラフラじゃないか!!保健室行こう、な?ベッドに横になった方がいい。」
「嫌だ……」
頑なに将吾は拒否する。
そんな将吾に俺は苛立った。
「絶対保健室に連れて行くからな!」
「平気だ。」
「ダメだ!」
「…だって、」
将吾は言葉を切って、寂しそうに俺を見る。
そしてぎゅっと抱きついてきた。
「今ベッドに横になったら、寝てしまう。」
「え?」
「寝たら忘れてしまう。葵の事。葵の表情を。」
「もしかして将吾、寝てないのか?土曜日から二日間も…?」
だから表情一つ一つ覚えていると言ったのか。


