教室を出た俺を待っていたのは、
「――葵!」
「………将吾」
将吾だった。
俺は視線を床に落としてしまう。
なんか……
将吾の目見れない……。
「葵……蓮に何もされなかったか?」
「されては…ない。」
言われたけど。
「ては?それはどういう意味だ?」
「ううん、なんでもない。じゃあ俺帰るから。」
歩き始めた俺の腕を将吾は掴んだ。
「待って。葵、何か変だ。」
「普通だよ。いつも通り。」
「じゃあ、」
グイッと腕を引かれ、将吾の顔が近づく。
「ちゃんと俺の目見て」
まっすぐに向けられる視線に目を合わせられない。
「や、やめろよ。人いるんだから」
「別に構わない。」
「俺は嫌だ。」
将吾の腕を振りほどいて、距離を取る。
「……明日、」
将吾がおもむろに呟く。
明日は土曜日。
「デートしよう。」
「…え?」
「嫌か?」
「そういうわけじゃ…」
でもどうして突然…?
「駅前13時、いい?」
「え、うん。」
将吾は淡々と決めていく。
「それから、明日は俺を見つけても葵からは話しかけないで。」
「は?」
俺は思わず視線を上げた。
「俺が葵を見つけるから。」
「む…無理に決まってるだろ?だって将吾は――」
「顔を忘れても、葵を好きだって気持ちは忘れないから。必ず見つけてみせるから。」
信じて―――そう言って将吾は笑った。
「けど……」
「大丈夫。どこに行くかは任せて。」
「………分かった。」
「じゃあ明日ね。」
ポンと俺の頭を撫で、将吾は去っていく。
頭を押さえて俺はしばらく立ち尽くしていた。


