今朝はいつも通りに朝練して、真っ直ぐ教室へ来た。
図書館へは寄らずに。
榊に会うのがちょっと怖くなった。
昨日までの思い出をなかったことにされるのが。
俺が…
俺さえ忘れてしまえば、
元通りの日常。
今まで通りの生活………。
「浮かない顔してんのな。」
その声で我に返ると、目の前には恭介が顎肘をついて俺を見ていた。
「ちょっと考え事。」
「へぇ………ところでもう昼休みなんだけど、」
昼休み……
もうそんな時間なんだ。
「榊と飯食いに行かないの?」
「………今日はやめとく。」
「そう?でもお相手は葵を探してますけど?」
「え!?」
恭介が教室の入口を指差す。
そこには確かに榊が立っていた。
なんで………?
「神崎葵を知らないかって聞いてきたから、待たせておいた。行ってあげれば?」
「………う、ん」
おずおずと俺は立ち上がり、少し俯き気味に榊へ近づいた。
「あの…」
声をかけると、数秒俺を見て
「神崎葵?」
と榊は言った。
「うん…」
やっぱ覚えていた訳じゃないよな…。


