「ここ?」
「うん。」
ニコッと笑った榊に連れられてきたのは、使われていない教室の前。
「元は音楽室だったらしい。」
「へぇ。でも鍵掛かってるんじゃ――」
と言いかけた目の前で、いとも簡単にドアは開いた。
「鍵、壊れてるんだ。」
言いながら中へ入る榊に続く。
中には複数の机、椅子、メトロノーム、グランドピアノ。
グランドピアノを覆っている布に薄く埃が被っている。
「授業サボるなら最高の場所だよ。」
「榊って授業サボることあるの?」
「あるよ。」
ちょっと意外。
お互い椅子に座って、さっきのメロンパンにありつく。
んー!
やっぱ美味い!!
「なぁ、榊の髪って地毛?」
「ああ、そうだけど」
「へぇ、すっげー綺麗な色だよな!」
「そうかな?気にしたことなかったけど」
たわいもない会話をしながら、食べ進めたパンは、あっという間になくなった。
「足りた?」
「充分だ。」
「普段から食わないとダメだぜ!育ち盛りなんだからさ!!」
「ふふ、神崎は面白いね。努力するよ。」
絶対努力する気ないな。
でも榊が笑ってくれたから、いっかぁ。
「榊ってピアノ弾けたりする?」
「どうして?」
「弾けそうなイメージだったから」
「何それ。」
また笑った。
榊は印象にあったより、ずっとよく笑う人だ。
「ピアノね。独学だけど少しなら…ハマった時期があったから。」
「すげー!ピアノ弾ける奴ってなんか格好いいよな!!」
「でも巧くないよ。本当に少しだけだから」
「あ、なぁ今弾いてみてよ。」
ピアノを指差すと、榊は困ったなと呟いた。


