「――あたし、空っぽだった」

「は?」





放課後、夕日に照らされる教室でそう呟いたあたしに、若菜が怪訝そうに視線をやった。





皆が部活やバイトにと出払った教室で、あたし達はボンヤリ、何をするわけでもなくただ座っていた。





「いや、なんかそう思っただけ」




そしてハァ、と息を吐いて机に体を預ける。



頬にひんやりとした机を感じた。






「…なんか、超あんたらしくないね」


「まーね」






若菜が、ん、と素っ気なくポッキーの箱を差し出す。





「とりあえず食べれば」

「いらない…」





はぁー、とため息を一つ吐いてポッキーを引っ込める若菜。



そして言う。





「きくよ、話」


「うーん…なんか…


あたしって小さいなぁ、っていうか…」


「うん」



「なんか…思ってたよりあたしって何も持ってないんだなって」



「うん」




「……まぁ、そんだけなんだけど」






こんなこと今まで考えたこともなかった。





あたしは河田にフられて、実は自分が思っている以上に病んでいるのかもしれない。