アンジェが私の手から、それを奪ってごみ箱に捨てる。


「手、洗いに行こう。」


私は、アンジェに手をひかれるまま歩いた。





「リコ、泣き言は後でいくらでも聞いてあげるし、蒼にヤキ入れてあげるから、ここ出るまでは我慢しな。」


洗面所で、アンジェがそう言ってくれた。



…だよね。




アンジェは私の目を拭うと、洗面所にあったビンを手に取って言った。



「蒼が使っている香水、セクシーボーイだってさ…。

ボーイなんて年じゃないだろ。」



蓋を開けたら、いつも蒼先生から漂っている香りがした。



蒼先生の香りを胸いっぱいに嗅いだら、ほんの少しだけザワザワした気持ちが…抑えられた感じがした。