「絆創膏、ちょうだい。」


部員のコに声をかけられ、救急箱を手に走る。




入口近くを通らないと行けないので、足早に通り過ぎることにした。


「ごきげんよう。」


挨拶だけは、忘れずに…。






「今の、すっごく可愛かったよね!」


「蒼先生のクラスに『アークエンジェル』なんてご大層なあだ名のお嬢様がいるって聞いたけど、あの人のことかな?」


「『ごきげんよう』なんて言ってたから、間違いない。」




「あの人追い出して、後釜に収まる自信ある?」


「無理、あの容姿には勝てない。」


「大体、あのデカイ胸は反則だよ。」




「あの人辞めたら、部員逃げ出しそうだよね。」


「蒼先生の稽古厳しいし…、あれはもう鬼の域だよ。」


「蒼先生、授業も鬼らしい。」




「帰ろっか…。」


「そうだね。」






私が救急箱を抱えて戻った時には、入口に大勢いた女の子は誰もいなくなっていた。