「梨香、待ってた。」


僕は梨香の手を取って、応接用ソファに並んで座る。




「先生、HRでの挨拶すごく良かったよ。」


ニコニコしながら、梨香は誉めてくれた。



何言おうか、一所懸命考えた甲斐があった。



「坂下先生は及第点くれたけど、あの人に比べたらまだまだ…なんだけどね。」


「すごーい、坂下先生にも誉められたんだー。

昨年は、注意されてばかりだったのにね。」


「入学式のこと、まだ覚えてたのか?」


まいったな…なんて思いながら髪をかきあげると、隣で梨香が笑っていた。




「アンジェも、坂下先生の挨拶の方が良いって。」


「アンジェが?」



あいつは坂下先生のこと、苦手にしていたんじゃないのか?



箝口令がしかれているが、過去に坂下先生をカミソリで切った…こともある。




だから、坂下HRでアンジェを受け入れると決まった時、僕がアンジェの面倒をみるものだと…思ってた。