しばらく、お互いに沈黙する。



口を開いたのは、梨香の方だった。


「先生は、私が卒業するまで…なんて、待ってくださらないですよね。」


あと2年は、正直言って長い。


「余合は、待てる?」


「先生が付き合ってくださるのであれば、今すぐがいい…。」


そうだよな、それは僕も同じ気持ちだ。



僕はシルバーの携帯を取り出し、梨香に向けた。


「携帯、赤外線受信できる?」


「はい、できますけど…」


「僕と付き合うなら、秘密の恋だよ。

楽しいことよりも、苦しいことの方が多いかもしれない。

それでもいいなら、赤外線でアドレス受け取って。」


「たとえ、いばらの道でも先生と一緒なら…私は幸せ。」
 

梨香はそう言って、携帯をいじる。



嬉しいことを言ってくれるな…。



「余合…いや、梨香。

学年末の考査が終わったら、デートしようか。」


「本当?」


「それ励みに勉強しろよ、成績落としたら承知しないからな。

以上、説教終わり。」


梨香は、本当に嬉しそうだった。


そんな彼女を見てると、僕は幸せな気分になる。



この幸せは、壊したくない。


誰にも気づかれないようにしなければ…。