私が、子供をおろしたことを告白したあと…。


蒼先生は私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。



「あのときの…、妊娠していたんだね。

辛かったよな、ごめん…。」


私の頬が濡れた。


私のじゃなく、蒼先生の涙で…。


蒼先生が泣くのを見たのは、この時が初めてだった。


「梨香、もう会わないなんて…言わないで欲しい。

僕には梨香が必要、だからそばにいて欲しいと思っている。」


「1人じゃ育てられないからって、あんな取り返しのつかないことしたのに…。

先生はそれを許してくれるの?」


「許すもなにも、梨香は悪くない。

梨香が一番そばにいて欲しいときに、行方をくらませたのは僕なのだから…。」


「それは、先生のせいじゃないもの…。」


蒼先生は抱きしめる腕を解き、自分の涙を拭った。


「僕は梨香を愛してる、1日たりとも忘れたことなんてなかった。

さっきも言ったけど、僕はこれからも梨香にはそばにいて欲しい。

だから…。」


蒼先生は居ずまいを正し、続けて言った。


「余合梨香さん。

二十歳になったらすぐに、僕と結婚してください。」