梨香の言葉に、僕は思わず彼女を抱きしめた。


周りに、みんながいることも忘れて…。



結婚して8年、その間に1度流産している。


子供が成人するよりも先に、自分が定年を迎えるのはちょっとな…。


なんて思っていたから、最近は少し諦めかけていた。


子供ができたと知って、本当に嬉しかった。



だけど…、ちょっと贅沢かもしれないけど…。


「こういうことは、2人きりの時に報告するものだろ…。」


「ごめんね、家に着くまで待てなくて…。」


僕の腕の中で、梨香が手を合わせて申し訳なさそうにしていた。


ホント可愛いな、梨香は…。




「えーっ!先生の奥さんって、梨香なのぉー!?」


「いつから付き合ってるんだ!?」



みんなに責められ、渋々白状した。



「うわーっ、信じらんねぇ!

在学中に、手ぇ付けてたのかよぉ~!」


「教師のくせに生徒に手を出すなんて、ありえなーい。」


「今日は、先生をツブすぞ!」


「梨香ちゃんにお酒を飲ませるわけにはいかないから、先生が代わりに飲んでよ。」



マジかよ…。



「おい、ちょっと待て。

僕と梨香は責められて、アイツには何も言わないのかよ…。」



僕のセリフを聞いたみんなは、少し間をあけてから言った。




「彼女は、責め甲斐がないというか…。」


「相手が、相手ですし…。」




そんなやりとりを、写真の中の坂下先生が笑って見ているように…見えた。