「先生のお母様が訪ねて来たとき、話をしただけじゃないの。

財産の殆どを叔父に持ち出された後で、屋敷も売ったのだけれど、生活どころか雇っていた使用人たちの給料も満足に払えなくて…。

手切れ金だって言って渡されたお金、受け取ったの。」



「それで、僕に悪いと思ったのか?

元はといえば、梨香のとこの会社を乗っ取って窮地に追い込んだのは僕の父だ。

だから、そんなことは気にすることじゃないよ。」




蒼先生が、私の涙を拭ってくれた。


そんなに優しく、しないで…。


私、まだ大事なこと言ってないんだよ。




「それだけじゃ…ないの。」


せっかく拭ってくれたのだけど、溢れ出る涙は止まらなかった。



「そのお金使って、おろしたの。」


「おろした…って?」


「先生の子供、殺したの…。」




蒼先生が目を見開き、私を見た。