「他に、好きな奴でもできた?」


「そう、思ってくださっても…結構です。」



私が好きなのは、蒼先生だけ…。


しかし、自分がしたことを知られて軽蔑されるくらいなら…それでもいいと思った。



「コレを身に着けておいて、そうだと言うのか?」


蒼先生は、私の左手を取った。



薬指には、卒業式の日に貰った指輪が輝いていた。


確かに、これを身に着けておいて、他に好きな人がいます…は無いよね。




ここで逃げ出したところで、逃げ切れるとは思えない。



何も言わずにおくことができないものかと考えていると、携帯にメールが入った。


アンジェから…だった。





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このままじゃ、先に進めないよ。

リコだけならともかく、蒼も道連れにする気?

好きな人にそんな思いさせて、平気なの?


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平気じゃ…ないよ。


でも…。



「梨香、どうして会わす顔が無いなんて言うのか…ちゃんと話してくれる?」


私の左手を握りしめ、蒼先生が優しく問いかけた。



もう手詰まり…。


話すしか、ないよね。


蒼先生が私に失望して嫌いになっても、仕方ない。


私はそれだけのこと、したんだもの…。