手首を掴まれたままの私は、蒼先生の隣に座った。


「梨香、ごめん…。」


蒼先生は、そう言うと頭を下げた。



「謝らないで、先生。

私ね、先生が自分の意志で姿消したわけじゃないこと、知ってるの。」


「知ってるって…?」


蒼先生が、少し驚きながら顔を上げた。



「先生がいなくなった後、先生のお母様にお会いしたの。」


私は、一息ついてから話を続けた。


「謝らなきゃいけないのは、私の方なの…ごめんなさい。」


「何故、梨香が謝る?」



とてもじゃないけど、あんなこと…言えない。


「ごめんなさい、もう…会えない。」


涙が溢れた。



「会えないって、何言ってるんだ?」


「もう先生に…会わす顔、ないの…。」



私は、ただ泣き続けた。