すっかり桜が散ってしまった桜の木を見上げる。


今日も松戸は悉く僕に反発する。


正直、少し疲れた…。



今年も、この花をゆっくり眺める機会を逃してしまった。


最後に桜を愛でたのは、いつだったか…。


僕が、教員になりたての頃だ。


入学式が始まるというのに梨香と2人で桜を眺めていて、坂下先生に注意された。



もう、1年以上も彼女に会っていない。


梨香は今、どこで何をしている?


可愛いから、もう新しい彼氏でもできたかな?


彼女が幸せなら、それでもいい…。




ぼんやりしていたら、桜小路の…スズメの方に話しかけられた。


「梨香さん、見つけました。

前に会った時は、短大辞めるようなこと言ってましたけど…復学したみたいです。」


今までの調査では、進学するはずの短大を休学しているということだった。



会いに、行こう。


そう決めた僕は、歩き出した。



「まさか、女子短大の前で待ち伏せするつもり?」


後から来た楔に、そう言われた。


…マズイよな、やっぱり。



「私が、呼び出しますね。」


スズメがそう言って、微笑んだ。


その微笑には、少し悲しみも混ざっていた。



彼女にこんなことをさせるのは、本当に申し訳ない。


だけど、スズメの協力なしでは、梨香にもう一度逢うことは叶わなかっただろう。


「悪いが、よろしく頼む。」