3月に入ったある日、理事長室に呼び出された。



4月から、教員として本採用されることが決まった。



そして、難問を1つ抱えることになった。



あの、松戸峻の教育係…。


本当ならもっと年長者の方が良いのだが、この学校の教員たちは彼に遠慮するらしい。



奴とは2月の件以来、顔を合わせてもいない。


険悪な雰囲気になることは、間違いない。


少し迷ったが、引き受けることにした。


理事長には、職員室の雰囲気が悪くなるであろうことを先に詫びた。




何故、引き受けたか…


平たく言えば、坂下先生ならば引き受けると思ったからだ。


別に、彼のコピーを演じるつもりはない。


僕の目標は、梨香と出逢った入学式の日から一貫して、坂下和という人だけだ。


1歩でも近づきたい…。


松戸の教育係は、自分が成長するためにも必要なことだ。