「これ、楔先輩から預かった。」


哲也はそう言って、和紙で作られた袋を僕に渡した。



梨香の髪を入れた封筒は、松戸に破かれたんだったな…。


渡された袋は、髪の束を入れるのに丁度良かった。



「自分で渡せばいいのに、松戸先生と従妹だから顔を会わせるのも嫌だろうって…。」


「気、遣い過ぎだな…。

松戸と足して2で割ったら、丁度良いのに。」




「柾樹兄さん、良かったらその髪の人の話…聞かせてよ。」


哲也に言われ、梨香のことを話した。



僕にとって、彼女は今でも大事な女性だってことを…。




話し終えた僕に、哲也が言う。


「せめて、アンジェって人にそのことが伝えられたら良いね…。」


「そうだな…。」



梨香にはもう逢えないけど、アンジェにはもう一度会って話をしたい…。


心から、そう願った。