1人になりたくて、校舎の陰に潜む。



梨香を汚された…そんな思いで、心がいっぱいになった。



壁を背にして座り込む僕の目の前に、2本の足が見えた。


顔を上げると、哲也だった。



「嫌なとこ、見られたな…。」


僕はそう言うと、ハンカチで頬を拭った。



「ごめん。」


「哲也が、謝ることないよ。」


「俺も、自警団の一員だし…。」


「その前に、半分血を分けた弟だろ?」


哲也が、僕の隣に座り込んだ。





「ところで、自警団っていうのは何なんだ?

僕には、松戸の親父さんが理事長になるために作られた組織としか思えない。」


「その通りだよ。

けど、実際には生徒が困っていることも解決することもしてる。」


「それに手を貸してるってことは、松戸の親父さんが理事長になることは賛成なんだ?」


「まぁ…楔先輩のお父さんは、寄付金上納する家の生徒を優遇する制度を創りあげるみたいだし…。」


「この学校かなり古いし、上納金で修繕工事を行う気でいるようだからな。

だからといって生徒差別化するのはどうかと思うけど…。

だけど、ゆくゆくは松戸が理事長になるのかと思うと、安易に松戸の親父さんは推せない。」


「その辺は、理事長も心配してる。

だから、決められずに悩んでる。」