数日後、理事長の孫である松戸という1年目の教員に呼び出された。



松戸は、臨時教員である僕が嫌いなのかトゲのある態度で接してくる。


だから、僕は彼が苦手だ。




呼び出された先は、自警団の控室として使われている部屋だった。



この学校は、校内にそんなものを作らなきゃならない程の問題でも抱えているのか?


この数ヶ月、僕が見たところでは、生徒に問題があるとは思わなかった。



問題なのは、むしろ教員たちの方だろう。



来年3月をもって退任する理事長の後釜に2人の息子が争い、教員間で派閥まで作られている。




部屋に入ると松戸の他に、彼の従妹である楔(くさび)と桜小路の双子…それに男子生徒が一人いたが、名前は知らない。


椅子を勧められる気配はなく、敵を見るような視線が投げかけられた。



僕は努めてにこやかに話すことにした。


「僕に用とは、どのようなことでしょうか?」


「上着の内ポケットの中に入っているもの、出してください。」


松戸が上からものを言うような口調で、言い放った。



これに、何の用があるというのか?



僕は上着の上から、胸の辺りを押さえた。