「よく、これだけのものを集められたな。」


「自分の子供に頼まれたんじゃ、何もしないわけにはいかないしね…。

あなたたち、いつ仲良くなったの?」


「アンタがこの家に来て、すぐだよ。

5歳のガキ、いじめる趣味はない。」


「あの子は、よほど嬉しかったみたい。

それと、これは私から。

先立つものがないと不便でしょ?」



手渡された茶封筒を開けると、現金と私立高校の臨時教員採用通知書が入っていた。




「子供が通ってる学校で申し訳ないけどね。」


彼女がそう言って笑ったので、僕もつられて笑う。



「柾樹さんでも、笑うことがあるのね…初めて見た。」



そりゃあ…笑うことくらいあるだろ。


この家で笑うことなんて、ほとんど無かったけれど…。



「じゃ、他の奴らに見つからないうちに出て行くよ。」




次にこの家の敷居を跨ぐときは、近いうちに父の正妻になるであろうこの人の葬儀に参列するため…だろうな。



そんなことを考えながら、勝手口から外に出た。