次の出し物が終わっても、アンジェが戻ってこないので講堂を抜け出した。




外に出ると、かすかにヴァイオリンの音が聞こえた。




音の方へ歩いていくと、アンジェと蒼先生がいた。


先程のツィゴイネルワイゼンを、聴かせていたようだった。



「ねぇ、蒼…もう1回弾いてよ。」


「はぁ?

もう勘弁してくれよ、せめて他の曲にしてくれ…。」


「まぁ、それでも良いけど?」


「じゃあ…タルティーニ作曲、悪魔のトリル。」





今、あの2人に割って入れる雰囲気じゃなかった。




講堂で聴いたヴァイオリンの悲しい音色、それと同じ雰囲気をアンジェが纏っていた。


同じ悲しみを、2人で共有しているような…そんな気がした。




それでも、蒼先生のヴァイオリンを聴きたかった私は、2人に気づかれないように隠れて聴いた。