慌てて坂下先生から離れると、暗幕から蒼先生が出てきた。


「こっちは騙されませんでしたよ…。」


そう言うと、坂下先生にハンカチを投げた。



蒼先生の後ろでしゃがみこんでいたアンジェは、泣いているようだった。



坂下先生は、蒼先生にハンカチを返すと、アンジェに一言話しかけた。



「しばらく、蒼先生と余合さんでお客さんの相手をしていてください。」


坂下先生はそう言うと、アンジェと一緒に暗幕の奥に消えた。





「先生、アンジェ泣いてたけど…何したの?」


内容によっては、許さないんだから!


「アンジェ泣かしたの、僕じゃないよ。」


「ホントに、何もしてないの?」


「してないって…っつーか、泣きたいのは僕の方だよ。

梨香は坂下先生に抱きつくし、今日の飲み代を坂下先生に奢ることになるし…。」


「まさか…賭けてたの!?」



坂下先生に勝てるわけないのに、どうしてそういうことを…。


いや、そうじゃなくて…、彼女を賭けのネタに使うなんてっ!



「お互いの香水の匂いがついたハンカチ取り替えて、口塞いで騙されるかってね…。

だけど、梨香が自分の彼氏の腕の中かどうかが分からないとは思わなかったよ。」


蒼先生が、ガッカリしたように言う。



それを言われると、賭けのネタにされたこと…怒れないなぁ。



「間違えて…ゴメンね。」


「いいよ、これから覚えさせるから。」



蒼先生は私を抱く腕に力を込めると、ちょうどお客さんが来たというのもあって、首筋に顔を近づけた。



ちょっと、調子に乗って胸揉まないでよぉ。



「ぁん。」


蒼先生ったら、人前で私をイかせる気?



マットの上に倒れこみながら、そう思った。