文化祭1日目、アンジェがお父様と校内を回ると聞いた。


普段はイギリスにいるお父様だから、模擬店の当番を抜けることを反対したくはないけれど…。


ドラキュラ役、どうするの!?



「僕が、代わりにすることになったんだ。」


その声に振り向くと、既にドラキュラの扮装をした蒼先生が立っていた。



目にはカラーコンタクトが入っていて、光の加減で金色に見える瞳…。


カッコイイけど…。


「日光が似合うドラキュラなんて、いないわよ。」


私は、笑いながら言った。





時間になったので、持ち場につく。



私はドラキュラに血を吸われる役なので、お客さんが来たら倒れるだけ。


マットをひいてあるとはいえ、倒れた時の衝撃は…少し痛い。



「じゃあ、昨日の貰い損ねたご褒美も兼ねて、痛みを紛らわせようか?」


蒼先生が、ニヤリと笑った。



え?と思っているうちに、次のお客さんが入ってきた。



蒼先生は首筋に噛み付くフリを…否、本当に唇を押し付けた。



ちょっ…人前で、そんなコト…。


蒼先生にキスされ、ぼうっとなった私は、足元から崩れるように倒れこむ。



痛くは、なかった。




お客さんが行った後


「今の演技、良かったよ。」


なんて言われた。



今の、演技じゃないんだけど?


「今日はあと何回、梨香の首筋にキスできるかなー?」


もう、蒼先生ってば…。



声が抑えられなくなったら、どうするのよー。






しばらくして、もう1人ドラキュラの扮装をした人が姿を見せた。


普段と雰囲気違うけど、誰なのかはすぐに分かった。



「アンジェのために、びっくり企画ってとこだよ。」



蒼先生はそう言うけど、内部を知っているアンジェがここに来るの?