蒼先生が2人きりになった途端、問い詰める。



「梨香、何考えているんだ?

ずっと親の会社、継ぐ気でいたんじゃないのか?」


「私が大学を出る頃には、会社はなくなっているかもしれません。

だとしたら、経済学部への進学は意味のないことです。」



最近、父が創った会社が思わしくないのを知った。



「だったら、なぜもっと早くに相談しない?」


私が本当に望んでいるのは…。



それを今、口にしたら進路から逃げていると思われてしまう。


私は、口を噤むしかなかった。


「僕では、頼りないか…。」



違うの…。


私は首を横に振った。






坂下先生が戻ってきた。


この学校から近い家政科や生活科学科のある短大のパンフレットを、手渡してくれた。



何で短大?


「4年も待てないでしょう?」


坂下先生はそう言って微笑んだ。


私が欲しい言葉、坂下先生には分かっているみたい。




坂下先生は、蒼先生を見ると


「蒼先生を同席させた意味、なかったようですね。」


そう言って、ため息をついた。