卒業式の後、蒼先生に数学科教材室に呼び出された。


「今日は付き合い始めてから1周年記念…と、誕生日おめでとう。」


蒼先生は、私の背後に回り、小さなハート型のネックレスをつけてくれた。



『次は、梨香に似合うネックレスをプレゼントするよ。』


約束、覚えててくれたんだ。



「先生ありがとう、とても嬉しい!」


蒼先生の方を向き、抱きつこうとした…ら、阻まれた。


「学校じゃ、ダメだって…。」


あ、そうだった…。




「じゃあ、今日学校が終わったら逢ってくれる?」


「もちろん!

ウチにいる分には、いくら抱きついても構わないよ。

なんなら、エッチなこともする?」


えっ…む、無理無理無理!



私は顔を真っ赤にして、頭をぶんぶん横に振った。




そんな様子を見て、蒼先生が吹き出した。



「冗談だよ、梨香。」


あ…なんだ、もうヤだなぁ…。





蒼先生が窓の外を見たので、私も一緒になって見る。



この窓から見える中庭では、卒業生がきゃあきゃあ言いながら写真を撮る声がここまで聞こえた。




「来年は、私もあんな風にクラスメイトと別れを惜しんだりするのかな…。」


「その時は、アンジェと一緒に写真撮ろうか。

坂下先生の転勤がなかったら、4人で撮ろう。」


「坂下先生、転勤あるの?」


「あの人、5年もこの学校にいるから…無いとは言いきれないよ。」


「そっか…。」



春は出会いの季節でもあり、別れの季節でもあるのだけど…。



坂下先生とは、まだお別れしたくないな。