当日、いつもの公園前で待ち合わせる。


蒼先生は、黒いダウンコートに細身のパンツ姿で車に乗ってきた。



車から降りると、私を見て目を輝かせた。


「梨香、着物だー!

可愛いっ。」


なんて、いきなり抱きしめる。




もう…誰かに見られたら、どうするのよぉ。



蒼先生の香水と…


「綺麗だよ、梨香。」



耳もとで囁く甘い声にすっかり酔ってしまって、抗おうとする腕に力が入らない。


「行こうか。」


という声と同時に、蒼先生は抱きしめる腕を緩めた。




まだ、新年の挨拶をしていなかったことを思い出した。



「先生、あけましておめでとうございます。」


「あけましておめでとう、梨香。」



蒼先生は、そう言うとはにかんだ。






車を走らせて着いた先は、参拝客があまりいない小さな神社だった。



「大きいとこだと、誰かに出くわす心配あるし…。

ココは学業に効くっていうから、しっかりお参りしておけよ。」




蒼先生にはそう言われたけど、お願いするのはやっぱり…私たちのコトだよね。